肩こりの症状に対して即効性がありダイレクトに効く消炎鎮痛薬。その中の湿布は手軽に使えるので常備されている方もいるでしょう。しかし、市販の湿布薬は250種類もあります。薬局で購入する際、どの湿布薬を選んだらよいのか?必ず迷うはずです。
ここでは肩こりの解消法として湿布について紹介していきましょう。
湿布の種類
湿布には種類があることをご存知でしょうか?
第一世代、第二世代、経皮吸収型鎮痛消炎剤、ハップ剤、プラスター剤とあります。
湿布:第一世代
第一世代には冷湿布と温湿布に分かれています。
第一世代(冷湿布・温湿布)は温・冷どちらの湿布の効能書きを見ても、書いてある症状は同じです。さらに、同じ消炎鎮痛剤(消炎鎮痛成分はサリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、カンフル、メントールなど)が用いられているため薬の効果も同じです。しかし、使用している薬剤すべてが同じではないので使用感が違ってくるのです。
それでは、第一世代に使用されている主な薬剤を簡単に紹介します。
サリチル酸メチル
効能:消炎、鎮痛、鎮痒。知覚神経に作用する。昔からある外用薬で、関節痛、筋肉痛、打撲、捻挫などの症状を和らげる。新陳代謝を高め、末梢血管を拡張し血流を改善する効果がある。湿布剤特有の臭いの原因。皮膚からの吸収率が良い。
副作用:頭痛、悪心、嘔吐、食欲不振、頻脈など。皮膚からの吸収率が良いため傷ついた皮膚や粘膜には使用しないこと。
dl-カンフル
効能:消炎、鎮痛、鎮痒。実際に冷やすのではなく、冷感刺激作用と呼ばれる冷たいと感じる神経を刺激する作用がある。これにより、血管が拡張して血行を良くする。皮膚に塗ると刺激があった後、かゆみや痛みを取り除くという効果がある(局所麻酔作用)。虫刺され薬、清涼化粧水などにも使われる。
l-メントール
効能:鎮痛、鎮痒。実際に冷やすのではなく、冷感刺激作用と呼ばれる冷たいと感じる神経を刺激する作用がある。冷感により腫れを抑え、痛みを和らげる。清涼感があるので目薬、歯磨き粉、リップクリームなどにも利用されています。
トウガラシエキス
効能:鎮痛、抗炎症作用、コレステロール低下作用。温める効果をもち血管拡張、血行促進作用があり、筋肉のコリによる血行不全にも効果を示す。頭髪用化粧品、チンキ剤、皮膚刺激剤、止痒剤に使用される。
第一世代の湿布薬は以上の薬剤がおもに含まれています。
そして冷湿布・温湿布に大別されているのですが、冷湿布は、急性の痛みの緩和に効果的で、温湿布は慢性痛の緩和に効果があります。
冷湿布・温湿布とも皮膚に貼ると気化熱で体温は若干奪われます。温湿布が温かく感じるのは、それ自体が温度を高くしているものでなければ、多くがトウガラシエキス(カプサイシン)を含みこれにより皮膚の温感点を刺激しているためなのです。
冷湿布も実際に肌は冷やされておらず、dl-カンフルやl-メントールの冷感刺激作用により肌を冷やさず炎症を抑えているのです。
湿布:第二世代
現在主に使われているのは1988年以降にDDS(drug delivery system)の概念に基づき登場した第二世代と呼ばれる湿布です。
消炎、鎮痛効果を第一世代と比べより強く発揮出来るように非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)であるインドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェン、フルルビプロフェンなどを配合した湿布です。
第二世代の湿布薬はほとんどが冷湿布で一般の薬局・薬店で購入できる温湿布はありません。第二世代の温湿布はノニル酸ワニリルアミドという温感成分が配合され医療用として使用されており、必要な場合は病院で処方してもらいましょう。
第二世代の湿布に使用されているインドメタシンは鎮痛・解熱・抗炎症作用があります。強力な鎮痛作用と速効性がありますが、筋肉が痩せて細くなるという副作用があります(部分痩せをするためにインドメタシンが有効という都市伝説がある)。
ケトプロフェン、フルルビプロフェン、フェルビナクは、抗炎症作用があり、副作用がほとんどなく、有効成分が皮膚を通して患部に吸収・浸透しやすく効果も高い薬剤です。
湿布:経皮吸収型貼付剤
経皮吸収型貼付剤は薬剤(消炎鎮痛薬)を経口摂取や注射ではなく患部に貼り薬を皮膚から吸収させることにより効果を得るものです。
冷・温に区別はなく病院で処方される湿布などはこの経皮吸収型鎮痛消炎剤です。もっと簡単に言うと「湿布薬」のことを医療用語で「経皮吸収型貼付剤」と呼びます。
湿布:パップ剤・プラスター剤
湿布などの貼り薬はパップ剤とプラスター剤の2種類に分類することが出来ます。
パップとはオランダ語で糊状の薬剤を貼り付けて治療を施す罨法のことで、罨法とは「乾湿両様の冷・温熱刺激を病巣局所もしくは全身的に与えることにより、循環系や神経系に影響をおよぼし、これにより病気の好転、白覚症状の軽減を図ること」と定義されます。
パップ剤はガーゼ、不織布などに局所刺激剤、抗炎症鎮痛剤などをグリセリン、水などの液状物質とともに含ませた貼り薬です。水分配合量が多く保湿効果が高いことと厚みがあることが特徴です。消炎鎮痛剤と含有する水分の蒸発による患部の冷却効果があります。
プラスター剤(テープ剤)は薄いテープ状の布に薬効成分を吸収させてより密着性を増したものです。柔らかく伸縮性や粘着性に優れており、関節などの屈曲部位や可動域の大きい部位に長時間密着する特徴を持つことから、関節などの屈曲・可動部位に疼痛があるケースに適しています。
パップ剤との決定的な違いは水分の有無で、長時間の貼付は皮膚に負担がかかり荒れることもあるので注意が必要です。
湿布:注意事項
手軽に使用できる湿布ですが、使用上の注意があります。
①湿布は基材(薬を貼っている成分)が原因となり肌がかぶれることがある。
②湿布は皮膚を刺激する効果があり粘膜、湿疹、炎症を起こしている、患部に傷がある場合は使用しない。
③特に温湿布は刺激が強いので入浴の30分前には剥がしておく。
④湿布は痛みを根本から解消するわけではなく、痛み止めにとどまる。
⑤湿布が筋肉の緊張をほぐす・柔らかくすることはなく、あくまでも炎症を抑えているだけである。
⑥温・冷と区別はあるが肌の温度変化はなく、どちらかといえば両方とも若干下がる程度である。
つまり湿布薬は捻挫や打撲などの急性の炎症等には痛み止めとして効果が期待でき、当然病院でも処方されますが、肩コリを根本治療する場合には意味がなく、ツラさを多少和らげる程度の位置づけであるということです。
ですので、肩コリの根本治療をするのであれば湿布以外の方法をお奨めします。