肩こりの原因として最も多い姿勢の改善について紹介していきましょう。
姿勢の改善とはなんでしょうか。姿勢には、無理な姿勢、美しい姿勢、正しい姿勢、間違った姿勢と表現があります。肩こりに悩む方が著しく変わった姿勢で日常を過ごしているとは思えません。ほんの少しのズレによって肩こりになる場合がほとんどなのです。
ですから、肩こりに悩んでいる方がほんの少し姿勢に気を付ければ痛みは解消されるということです。
「日々の姿勢」でも紹介していますが、身体的にみてもっとも良い姿勢とは、背筋が伸び、背骨が「生理的弯曲」といわれる自然なS字カーブを描いている状態をいいます。胸をそらせた気を付けの姿勢では逆に肩こりの原因となります。
この「生理的湾曲」を保ち筋肉の負担を減らすことがこのサイトで目指す姿勢の改善です。
そもそも肩こりとは長時間、体を動かさずにいることによって血行が悪くなり、老廃物がたまって筋肉の緊張を引き起こす症状です。たとえば、デスクワークで同じ姿勢を保つためには肩や頸の特定の筋肉は収縮・緊張しつづけています。
ですから特定の筋肉に負担をかけない姿勢をとり、適度に体を動かすということをしていれば、肩こりにはなりません。イスに座るときや立っているときなどに、自分の姿勢に気を付けて、長時間同じ姿勢を取り続けないように適度に体を動かす、ということが大事なのです。
特に、肩こりに関する筋肉はインナーマッスル(頭反棘筋、頸板状筋、頭板状筋、肩甲挙筋、菱形筋)・アウターマッスル(三角筋、前鋸筋、僧帽筋)両者とも体の後ろ側に位置する筋肉群で、意識して動かすようにしてください。
また、首に関してですが現代の生活ではうつむきのまま過ごすことが多く、そうすると、「生理的湾曲」が崩れ不自然な姿勢となって首の痛みや肩こりを招きます。さらにストレートネックになるとしつこい首の痛みに悩まされることになります。
不自然な姿勢によって筋肉だけではなく、膜、靭帯にも歪が出てコリと痛みに繋がるので、姿勢を改善することは大切です。時々、「あっ、今姿勢が悪いな」ということに気づくだけでもすぐに姿勢を直すことができますので、まずは常に意識をするということを心掛けるようにしてください。
立った時の正しい姿勢
生理的湾曲をつくるためには、自然体で立った時両手は力まずにそのままだらりと下げ、両肩の高さを揃え、あごを引いて頭をまっすぐに起こし(目線は水平かマイナス5度くらい)、首筋・背すじをのばし(肛門を引きしめ、へそのあたりに力を入れて腹筋を引き締めると自然に胸が反り気味になる)、体重を軽くつま先・親指にかける。
わかりにくければ、壁を背に、あごを引いて立ち、後頭部、肩甲骨、おしりの3か所を壁につけることで、確認ができます。
座った時の正しい姿勢
椅子がなく地べたに座るときはあぐらと横座り(女の子座り)は生理的湾曲を保てないので、正座をしましょう。
椅子に座って生理的湾曲を保つときには、椅子の高さを太ももが水平(骨盤よりも膝がやや高い)になり、太ももの裏が椅子の座に軽く当たる程度に調節しましょう。
椅子に浅く腰かけたり、首を突き出すような姿勢は首や肩に負担をかけるので気を付けましょう。
正しい姿勢を維持する椅子
身体に負担の少ない姿勢(生理的湾曲)を維持するための座り方は紹介しました。次は、その姿勢を維持できる椅子を選ぶ必要があります。
肩こりに悩む方は通販ではなく試すことができる店頭での購入をおススメします。
正しい姿勢を維持する椅子の条件とは・・・
まず、椅子に深く座り足裏全体を床に着けた時、膝頭がおしりよりもやや高く、股関節が直角になる椅子の高さが必要です。高さ調節機能が付いていて、38~55㎝の間に座面の高さがくるもの。
座面の大きさは、深く腰かけたとき、ひざ裏と座面のふちの間にこぶし1個分の隙間ができるもの。
背もたれの高さや形が体に合っていないと、上体をしっかりと支えることができず、知らず知らずのうちに筋肉を緊張させることになりますので、椅子の背もたれは、肩甲骨の下端に届く程度の高さがあり、背中のカーブにあったクッションがついていること。
座面の素材が柔らかすぎると、上体の全体重を支える腰が沈み込んで、背中が丸まってしまいますので、座面がやや硬めの材質で出来ていること。
以上のような条件の椅子以外に座ることもあります。
たとえば、ソファーのような柔らかい座面と背もたれの椅子では腰が深く沈み込むことは必至で姿勢(生理的湾曲)を維持することが難しいので、このような椅子に座るときには、背中と背もたれの間にクッションなどを挟み込んで、背中が丸まることを防いでください。
また、座面が低すぎる場合は硬めの座布団を敷く、高すぎる場合は足を乗せる台を用意するといった工夫をすることで体に負担の少ない姿勢(生理的湾曲)を維持してください。
運転時の姿勢
運転時はハンドルやシフトノブを操作する腕と、ペダルを踏む足のみが動くという姿勢が続きます。体に負担の少ない生理的湾曲を維持する姿勢をとることは、安全運転上大切ですし、首や肩にかかる緊張も軽減できます。
また、同じ姿勢が続くので適度に肩・首まわりを動かして筋肉のこわばりをとることで肩・首のこりを軽減しましょう。
身体に負担の少ない運転姿勢を維持するためには、まず、シート・背もたれを正しい位置に設定します。
ハンドルに両手を置いたときひじが軽く曲がること、クラッチを踏み込んで膝が伸びきらないこと(首の前傾が強まり背骨の負担が増すため)、アクセルを踏んだ時膝が腰よりやや高くなること、背筋を伸ばした状態でハンドルに手が届くこと、を満たすシート・背もたれの位置に設定してください。
柔らかいシートで腰が沈み込んでしまうようであればクッションを背中にあててみてください。
次に、運転中はヘッドレストに頭部をしっかり安定させ、前のめりにならないよう意識してください。
靴で正しい姿勢を保つ
スニーカー、革靴、厚底の靴、スパイク、サンダル、ミュール、下駄等、履物にはいろんな種類があります。そのなかでも靴を履いているときは、靴の中敷き、靴底を介して地面に立っています。とくに、女性はヒールのある靴を履く機会が多いでしょう。ヒールのある靴を選ぶ際の注意点を紹介しましょう。
ヒールの高さは1~2cmの低めのものであること。指先に適度なゆとりがあり、甲やかかとをしっかりと包み込むような形であること。かかとがすべりやすい、靴底が硬すぎると地面に着地するときの衝撃がそのまま足腰や背骨に伝わってしまうのでこういった靴は避けましょう。
キッチンで正しい姿勢を保つ
今日では性別にかかわらず、キッチンに立って家事をこなします。肩・首のこりが原因で家事が億劫になっては困ります。家事をこなすときも正しい姿勢(生理的湾曲)を維持し、肩・首の筋肉への負担を軽減しましょう。
このサイトでは調理台に注目します。
調理台の位置・高さが体に合っていない場合、首が前かがみになる、背中が丸まる、腰に負担がかかる、手首・ひじの位置が適切でないため腕・肩・首にかけての筋肉にも負担がかかる、ということがあります。
調理台の位置・高さが合わない場合は、椅子や踏み台を用意して適度な高さで作業できるようにしましょう。そして、重い鍋は肩や腕に負担をかけますし、見落としがちなところでは切れ味の悪い包丁を使うと手首に負担をかけ、腕・肩・首へと伝わってしまいます。
調理道具は毎日使うものですので、使い勝手のよいものを選んでください。
また、作業時の明るさにも気を配ってください。手元が暗いと前かがみの姿勢になりがちになりますし、料理がおいしそうに見えません。
暖かい時期はあまり気になりませんが、冬や寒い時期は、火を使っているときやお湯に接しているときにも背中や、足元が冷えています。体を冷やすことは、筋肉をこわばらせ血流が悪くなるので、筋肉の緊張を悪化させます。冷え性の方や、調理場が寒い時は暖房を使用して体が冷えないように心掛けてください。
そして、キッチンで家事をこなすときも、同じ姿勢が続きますので、適度な首・肩まわりの運動をすることで、筋肉の緊張をほぐしてください。
オフィス・OA作業時に正しい姿勢を保つ
デスクワークをするときに正しい姿勢(生理的湾曲)を維持するためには、OA作業に適した椅子と机が必要です。
長時間パソコンに向かって作業をすることを念頭におくと、膝・腰・手首・ひじの位置・角度、視線の角度に注目して首・肩・腰の筋肉にかかる負担を軽減します。
OA作業に適した椅子
負担の少ない姿勢(生理的湾曲)を維持しOA作業に適した椅子には次の必須条件があります。
- 膝を90度に保つため座面の高さが調節できること。
- 脚部の血管を圧迫することを避けるため、深く腰かけた状態で座面の縁とひざ裏の間にこぶしがひとつ入る座面の奥行きがあること。
- 上半身を背もたれに預けて腰の角度がおよそ100度になる姿勢が最も負担が小さくなるので、背もたれの高さが背中の真ん中よりも高めで、背中のカーブに合った形のクッションがついており、なおかつ後方に5~10度ほど傾くこと。
- 肘かけがありキーボードに手を置いたとき、ひじが90度よりやや広めの角度になること。
以上の必須条件に合わない椅子に座って作業をするとき、たとえば足裏全体を床に着けることができない高すぎる椅子に座る場合は、推奨の高さになるよう踏み台を使うなど工夫をして負担の少ない姿勢(生理的湾曲)を維持してください。
OA作業に適した机
体に負担の少ない姿勢(生理的湾曲)を維持しOA作業に適した机には次の必須条件があります。
- 日本人の場合、机の高さは65~70㎝の高さが標準とされているが、椅子に座ってキーボードに手を置いたとき、ひじが90度になること。
- 自由に動きが取れないと緊張をほぐすための適度なストレッチが行えないので、腿と机の間には脚が自由に組みかえられる空間があること。
- 手首を圧迫しないように縁に丸みがあること
- キーボード操作時、スペースがないと手首とひじが宙に浮いた状態になり、肩・腕に負担がかかるので、手首からひじにかけての部分を置けるスペースがあること。
以上の必須条件に合わない机を使ってOA作業をするとき、たとえば、スペースに余裕のない机の場合アームレストなどを活用して作業姿勢を安定させ体に負担の少ない姿勢(生理的湾曲)を維持してください。
ディスプレー・キーボード
身体に負担の少ない姿勢(生理的湾曲)を維持し筋肉の疲労を軽減するためにはデスクに置いているディスプレー・キーボードの位置にも気を配る必要があります。
人間の自然な視野は、5度より下の範囲とされています。ディスプレーの位置が高いと、脊柱起立筋を使って頭部を引き上げて見続けなくてはならず、それが肩・首の筋肉にも影響し肩がこりやすくなります。
ですから、視線を水平から上下5度以内に収まるようディスプレーの位置を調整してください。そして、ノートパソコンの場合はディスプレーの位置が低くなり、背を丸め、前傾姿勢になりがちであるので、気を付けること。
キーボードの位置が高いと、手首が不自然に反り返るので、手首・腕・肩に負担がかかります。キーボード操作をするとき手首のそりが大きくなる場合は、天板に敷物を敷くなどして高さを調整しましょう。
また、両手首の間隔が近すぎる場合も手首の反りが大きくなってしまうので、小さいキーボードを使用している方は注意が必要です。
身体に負担のかからない姿勢(生理的湾曲)を維持するためには多少の時間が必要です。なぜなら、姿勢を維持するためには、筋力が必要でその筋肉が備わるために多少時間がかかるということです。
しかし、筋トレを無理にしなくても正しい姿勢を維持し続けていれば自然と筋力がつくので、意識して正しい姿勢を維持するようにしてください。そして、冒頭でも紹介したように適度に首・肩・背中周りの筋肉を動かすことをしてください。