病院(整形外科)で肩こりを治療する際、牽引療法が選択される場合があります。
牽引療法といえば腰痛治療で使用される代表的な施術方法でありますが、肩こりにも効果があると言われています。ここでは牽引療法について紹介していきましょう。
牽引療法:目的
牽引療法の主な目的は、骨折の整復と固定、脱臼の整復、引っ張ることで頸椎や腰椎の椎間板の圧迫を開放して、正しい位置に戻し、ストレッチ効果により腰周辺筋肉の緊張を緩和し、マッサージ効果により血行をよくし、関節の安静を保つこと。筋肉の血行が良くなることで肩こりにも効果があるわけです。
牽引療法:持続牽引と間歇(間欠)牽引
牽引療法には、四肢牽引療法、脊椎牽引療法に大別され、さらに牽引方法により分類すると、骨を直接牽引し上腕骨・大腿骨など長管骨の骨折治療を行う直達牽引法と、皮膚・腰椎帯などの介在物を介して牽引する介達牽引法の2種類があります。肩こり治療には、脊椎牽引療法における頸椎、腰椎に対する介達牽引が用いられます。
介達牽引は腋を固定し、骨盤部をベルトで止めて体を固定して、器具などで首や腰を引っ張るという方法で治療を行います。
また、牽引療法には弱い力で数時間牽引する持続牽引と体重に合わせて少し強い力で15~20分間引っ張っては休み、引っ張っては休みと断続的に牽引する間歇(間欠)牽引、またこれらをミックスした方法などがあります。
持続牽引の利点は装置ならびに操作が簡単であり、家庭でも使用できることが挙げられますが、牽引の負荷が常にかかっているので苦痛となる場合があります。
間歇牽引の利点は筋肉のこわばりを和らげ、筋肉、靭帯及び被膜組織にマッサージ効果を与え、組織の腫脹の減退、血行不全の改善、ヘルニア予防、牽引を断続的に行うので大きな牽引力がかけられることが挙げられます。ただし、重度のヘルニアや坐骨神経痛には、かえって神経根刺激症状の悪化をきたすことがあり、逆効果となる時があります。
牽引療法:注意事項
ただ、牽引療法は圧迫されている椎間板を広げるために体を強制的に引っ張るわけですから、筋肉に反発されます。とくに肩こりなどのこわばりが強い筋肉を牽引すると筋肉が反発し弛緩するどころかより一層こわばりが強くなる場合があるのです。こういった場合があるので、牽引療法を選択しないこともあるようです。
また牽引療法は患者が次のような状態の場合行われません。
- 虚弱者
- 高齢者
- 妊婦疼痛や炎症症状が著しい急性期
- 初期及び急性期のムチ打ち損傷
- 脊椎カリエス、リウマチなど炎症性脊椎疾患
- 骨粗鬆症
- 坐骨神経痛
- 腫瘍の骨転移(癌由来の腰痛症など)
- 動脈硬化の著しいもの
- 心疾患
- 肺疾患